2011年5月28日土曜日

発電・送電事業の分離(3)-メリットの検証2-

他のブログに紹介されてトラフィックが急増してびっくりしました.
ありがたいのですが,稚拙な文章で申し訳ないです.

前々回前回では概要とそのメリットについての考察(前半:特に市場原理に寄る電気代金の値下がり)についてやりました.
前回はテンションが上がりすぎて一つの事しか書けませんでしたが
今回は
・再生可能エネルギーの普及促進
・発電地域へ正統な対価が支払われる(地域型発電会社)
・参入障壁の低下(発電事業は参入障壁が低い)
・電力会社と政治・官僚機構・マスコミとの癒着の防止(電力会社が巨大な力を持たない)
について考えてみました.

【再生可能エネルギーの普及促進】
まず,結論から言いますと.
発送電分離から「再生可能エネルギー」が普及促進になるかと言えばNOです.
それは何故か・・・・
市場原理にて再生可能エネルギーを普及させるためには
「経済効率性」又は「付加価値性」が現存の発電方法が上回ることです.
色々な機関が統計を出して各々の電力料金を算出していますが再生可能エネルギーは補助金なしでは既存の発電方法には勝てません.なので「付加価値性」については「高くても再生可能エネルギーを使いたい」と思う人の数ですが,電気についてはそれ自体の「質」は変わらないので(配電される電気の事)ただ「エコロジー精神」が「経済意識」を超えた時にしかその「付加価値性」は発揮されません.そしてそれが人口の大多数を占めるのも難しいでしょう.
しかしながら電力の自由化がなされた後,再生可能エネルギーが普及した国として「スペイン・ドイツ」が挙げられます.この国がどうして再生可能エネルギー普及したか
それは電力の自由化ではなく「全量買い取り制度」を初めとする「環境政策」にて普及していると考えられます.
つまり,再生可能エネルギーが普及するためには「発送電分離」は関係なく「環境政策」にて左右される.
ただ,発送電分離をすることにより「環境政策」がスムーズに行える面はあるでしょう.

【発電地域へ正統な対価が支払われる】
「正統な対価」の定義が曖昧ですが「発電した電気の売上すべてがその地域の所管する事ができると」考えてみます.
そして,この発想は発電所を地域の自治体や地元企業が運営することにより,利益を都市部の企業に移転されることなく全て地元に利益が落ちるというところからでてきます.
これは,地元企業や自治体にその発電所を運営する「能力」があれば恐らくそのとおりになるが
その設備を活用する事が出来る自治体や地元企業がどこの地域にもあるとは考えにくいです.
なので,全国画一的に言える事柄ではないが
条件を満たせば「発電地域へ正統な対価が支払われる」といえます.


【参入障壁の低下(発電事業は参入障壁が低い)】
現在の日本では高電圧部分については電力の自由化がされています.
では,それがどの程度の割合かと言うと日本の総電力使用量の63%が電力自由化の対象となっております.
しかしながら,高電圧で安定性のある電力供給が現在のところ求められていることから必然的に大規模な発電所が求められその結果
鉄鋼メーカ・石油メーカなどのインフラ・人材・資金ある会社のみの参入になっています.
また現在のところ政府の環境政策がわからないなどを考えた場合はIPP(電気卸売業者)としての参入は旨みが少ないものと思われます. (低コストを実現した火力に対して重い税金をかけられる可能性や環境アセスメントの厳重化など)
しかしながら,電力の自由化が完全に行えれば低電圧部分,つまり小規模商店や一般家庭に対する電力供給の電力の自由化が進めば
分散型や小型の太陽光や風力の電力会社が誕生する余地はあるでしょう.
しかしながら,大きな盲点としては「電力の安定供給」でありそれを実現するには抜本的な「送電・配電網」の取り替えが必要となるでしょう.(再生可能エネルギーは概して不安定)
このようなコストを新規参入業者が払うのか税金で賄うのか問題がありますが
現在の状況で電力の完全自由化しても状況は大して変わらないが,政策的に進めて行けば十分参入障壁の低下は考えられる.

【電力会社と政治・官僚機構・マスコミとの癒着の防止(電力会社が巨大な力を持たない)】
これについてが現在の議論の中で最もウェイトが置かれている部分と思われ(国民感情的に),このような動機は不順であるという意見が経団連の会長から発言がありました.
今までは,コストや環境などの事を言っていたのだが突然「政治」がからみ
「政治」の為に「民間業者」が分解されるというのは,資本主義の国としては些か疑問を感じます.しかしそのような私信はおいておいて
発送電の分離で実際に「政治・官僚機構」そして「マスコミ」との癒着が防げるのだろうか.
このような癒着で問題となるのは,電力会社を監督する役割を持つ国とマスコミがタッグを組んでしまうことで電力会社に利益誘導されそれが市民に目につくことにならず.
さらに,安全性などの監督が甘くなる.という問題だと思います.
この力の源泉としては,やはり「莫大な金」です.
政治に対しては「献金」
官僚機構に対しては「天下り」
マスコミに対しては「スポンサー」
として,力を行使しその大きな力の源泉となる金の出元が
「規制業界」
という国の法令によって守られた限りなく高い参入障壁を持った市場を独占していることでしょう.
正直,発送電分離や電力会社の解体をしたからといってこれらの問題が片付くわけでもないと思っています.
ここで変わらなければならないのは「電力業界」だけではなく「国・行政」「マスコミ」全てが変わらないといけないんだと思いますね.
この問題は定量的な考えができないので私は苦手です.

消化不良の面も否めませんが,とりあえずは発送電分離の概要・メリットの検証についてはここで終わります.
次は発送電分離と共に語られる「スマートグリッド」とかそのへんを書けたらなあと思いあます.

今日は我が母校っていうか,在学校の野球の試合
是非ともW大学に勝って優勝を決めてもらいたいです.

2011年5月19日木曜日

発電・送電事業の分離(2)

前回は発送電事業の分離について「概要」を説明しました.
今回は「一般的にあるメリットの妥当性」についてです.
では前回のおさらいで「一般的な主張にあるメリットです」

【メリット】
・自由競争による電気料金の値下げ(日本の電気料金は世界一高い)
・再生可能エネルギーの普及促進
・発電地域へ正統な対価が支払われる(地域型発電会社)
・参入障壁の低下(発電事業は参入障壁が低い)
・電力会社と政治との癒着の防止(電力会社が巨大な力を持たない)

他にも「メリット」ありそうですが
これを一つ一つ今回・次回で考えてみましょう.

【自由競争による電気料金の値下げ(日本の電気料金は世界一高い)】
まず,最初に「日本の電気料金は世界一高い」 の主張は間違っていると断言しましょう.
資源エネルギー庁の「資源エネルギー白書」です.
これ見てわかるように
日本は決して電気代が高いわけではないです.
では,「自由競争による電気料金の値下げ」
です.

どうして自由競争になると値段がさがるのか・・・
子供向けですがこのサイトはなかなか分かりやすいです.(まな@ぼう)
つまり,発電会社が価格競争を行って値段が下がる.
つまるところの「市場原理」ですね.

これが果たして「発電事業」にあてはまるか
発送電を行った国はいくつかありますが,そのモデルケースを考えてみます.

イギリスの発送電分離
英国では,サッチャー政権下で,徹底した電力自由化が,いちはやく実施された.
イングランド・ウェールズてでは,国有電力会社が1990 年に,発電会社 3 社と送電会社 1 社に分割・ 民営化(所有分離)され,発電市場かが自由化された.
小売市場では,独占的に電力供給してきた国有の12の配電局かが民営化され,新規参入が認められるようになった.
1999年までに,全ての需要家が供給事業者を選択できるようになった.しかし制度上一部の発電事業者が市場支配力を行使できるなど,欠陥が存在していたため電気料金が下げ止まり値上げを始めた,そこで2001年に新制度がスタートした.
しかしながら状況は芳しくなく2005年には,発電設備の効率的利用を促して、英国全域での料金引き下げを図るため、供給余力の あるスコットランド市場と、需給が逼迫するイングランド・ウェールズ市場が統合された.

ドイツの電力自由化
ドイツでは,1998年に電力市場が全面自由化されました.導入直後は1~2割の料金値下げされドイツの電力自由化は, 諸外国から成功例として取り上げられた.
しかし,2000年ごろから電力会社間の合併により電力市場の寡占化がおこり,料金は徐々に上昇し始めました.現在は新エネルギーの導入など高コスト発電の導入などにより先進国中では比較的高い電力料金となってます.

アメリカの電力危機
アメリカでは1978年から段階的に電力市場の開放が行われ,1990年代には完全な電力市場の開放が行われました.
しかしながら,この市場は電力を如何に「高く売るか」に焦点が置かれており(当然だが).電力は高騰し行政が規制をかけることにした.
すると小さい電力会社は財政危機に陥って,電力市場で調達できない場合は停電が起こることも度々あった.当時カルフォルニアではシリコンバレーを中心情報産業で好景気であり電力需要は勢い良く伸びて行った.そこで電力供給が逼迫してきたため再び規制緩和をした結果さらに電力料金が上がりカルフォルニアでは家賃より電力料金の方が高いという事態が度々起きることになる.
電力は卸売市場からそのまま利用者の電力使用料に反映できたため,電気会社はあえて電力を逼迫させていた面があった(エンロンなど).
このような事からカルフォルニアは大きな電力危機に陥ったのである.

これらの結果は発送電の分離と電力自由化から(特に市場原理に頼っている)導かれたのは
「自由化すると電気料金が下がる」
という議論は正しくはないと思われます.

【まとめ】
・日本は元々電力料金が高いとはいえない
・市場原理を取り入れる事により電力料金が下がるというというのは幻想であり,制度設計によっては電力供給の不安定化や電気料金の高騰をまねく

2011年5月14日土曜日

発電・送電事業の分離(1)-概要

東電が大変な事になり
中電も無用な損害を受けている気がしなくもない今日この頃
最近「発電・送電」事業の分離について盛んに取り上げられています.
それとセットで地域独占の電力会社の体制改革も叫ばれています.
mixiやBlogなどでは玉虫色の話しですが本当にそうなのだろうかという事
を中心に考えて行こうかと思います.

まとめていたら結構な情報量になったので数回にわけてやろうかなって思います.

【発送電事業の分離の概要】
字のごとく「発電事業」「送電事業」の分離です.
現在日本国内では発電所と電柱などの送電設備が地域独占業者にて一括管理されています.
その業務を分けてしまおう.という話しです.
一つのものを多数にわける事によってどんなメリットあるの?って思いますよね?
では実際に発送電を分離したらどのようになるのかシュミレートした後
ネット上にある主張を上げてみます.

【発送電事業の分離をすることでどのような生活になるのか】
発送電事業の分割の最大の特徴は
一緒に導入されると思われる「電力の自由化」でしょう
つまり
・使用する電気を選べる
という事です.

もし「私は再生可能エネルギーしか使いたくない」と思えば
その「再生可能エネルギー専門」の発電会社から買えばよいし
「安いエネルギーがいい」と思えば「石炭火力」から買えばいい
「高品質(安定供給的な意味)」だったら「原子力」から買えばいい

今まで「ベストミックス」されてた電気を使っていたが
その個人の「環境意識」「理念」「コスト意識」などを勘案してできるという訳です.

うん・・・
だから何?って感じですね

では,それに付帯すると思われるメリット(こちらが本論かな?)をあげてみます.
しかし,今から上げるのは「ネット上・マスコミ」が上げるメリットです.

【メリット】
・自由競争による電気料金の値下げ(日本の電気料金は世界一高い)
・再生可能エネルギーの普及促進
・発電地域へ正統な対価が支払われる(地域型発電会社)
・参入障壁の低下(発電事業は参入障壁が低い)
・電力会社と政治との癒着の防止(電力会社が巨大な力を持たない)

などがあります.
ちなみにこれらはすべて「一般的に言われている事」です.
真偽は今後のblogで検証していきます.

じゃぁデメリットは?
【デメリット】
・ない

というのが一般的な「発送電分離推進者」の主張です.
もうこりゃ,分離するしかないですねw


ではでは,今回はこの辺で
今回は概要だけなので物足りなかったかもしれませんが・・・

次回からはもう少し踏み込んで,
・これらの主張が正しいか
・そもそも前提条件はどうなのか
・発送電を効率よくするための技術(スマートグリッド・スマートメータなど)
・社会的にどんな変化が訪れるか
とかやっていけたらなぁって思います.

2011年5月8日日曜日

科学技術論(リスクマネジメント2)

前回はリスクマネジメントの中のリスク分析について考えました.
今回はリスクマネジメントの中のリスク管理について考えてみます.
特にリスク管理のプロセスの中のリスクアセスメントにフォーカスを当ててみます.

【リスクアセスメント】
リスクの大きさを評価し,許容できるものか否かを決定するプロセス

特に以下のようなプロセスを踏む
1.リスク因子により財務基盤にどのような悪影響を及ぼすか
2.それによりどのリスク因子から対処をしていくか
3.リスク対処のパフォーマンスを財務基盤への影響を考え検討する

またリスク管理において重要な概念である
「固有リスク」「統制リスク」「派生リスク」「発見リスク」
も考えなければいけない.
まず固有リスクとは「それ事態がはらんでいるリスク」であり
統制リスクは「統制活動によって固有リスクを防止できないリスク」
派生リスクは「あるリスクにより発生する他のリスク」
発見リスクは「固有リスク自体の発見をできないリスク」
である.

まず,再び旬な原発関連で話しを進めていくとします.
固有リスクとして最初に「津波による予備電源の損失」とします.
そうしますとまず,リスク回避策として「防潮堤の設置」が施されます.
しかし,統制リスクには「防潮堤により津波が回避できない場合」が挙げられます.
その後派生リスクとして「循環器系の停止」となりさらに派生リスクとして「炉内圧力上昇」→派生リスク「炉の暴走」→・・・・→派生リスク「炉の爆発」
などなど派生リスクの連なりでハザードに繋がるという考え方をします.
ちなみに考え方で派生リスクが固有リスクになるのは用意に理解できると思います.

このようにして,大事故は小さなリスクの連なりから発生している
そしてそのリスクの連鎖をどこで止めるかがリスク管理の真髄となるでしょう.

このリスク管理の段階では,とりあえず出されるだけ出す「リスク」を評価します.
それは「核爆発」から「階段をこける」レベルまで評価される事もある.
つまり「階段をこけなければ核爆発は防げた」という論理展開が出来るのがリスク管理です.
だからと言って,「階段をこける」というものを防ぐ必要があるのか.
防げるがあまりにもコストがかかる場合は・・・などなど出てきます.
その時に関するのが「許容リスク」です.

この「許容リスク」は「存在するリスクを放置し,ハザードとなってもそれを許容できるリスク」
という意味です.
なぜならば次の派生リスクに連鎖する確立が低くさらに,リスクがハザードとなっても許容できるレベルの損害リスクと財務基盤を持っている.からです.
つまりリスクは放置される事もあるというのが事実でしょう.

つまり,リスク管理とは前回もいいましたが「リスクを回避する」「リスクを低減する」を同時に行うものです.
ハザードを「許容リスク」まで低減させるという認識が必要です.

これらを踏まえて,現在の原発で問題となるのは
・原子力事故は「起きない」という前提
・確率という概念が日本人には馴染みが薄い
のとなるでしょう.

まず,原子力事故は「起きない」という前提でなければ
原子力反対派から強烈な批判をうけてしまう.
また事故の確率が数千年に1度といっても
「明日起きる可能性がある」と言ったらそれは「事実」であるため
一般市民や偉い人は必要以上に不安に感じてしまう.
そのため,リスク管理について十分行われていたのかと聞かれれば
NOでしょう.

このようにして,電力業者は甘い見積もりしかすることが出来ず
許容リスクをはるかに超えたハザードを引き起こす,派生リスクを抑えることもできない
さらに「原子力事故は起きない」という前提のために
「原子力事故」は「想定外」のものとなってしまったと結論づけられる.

リスクが無いと言えば,国民も安心する
反原発派の理論を抑えることが出来る
何かあれば「想定外」として片付ける

このような流れが問題だと考えられます.

実は,同じ理論が米国でも行われており
それが日本と同じように原子力事故(スリーマイル島事故)でおいて問われ
米国ではその後この「リスクマネジメント」について活発に議論されるようになり
現在に至ります.そのため米国の原子力事故におけるリスクマネジメントは非常に優れたものとなっており
航空機テロで原子力設備が攻撃された場合も想定され
事故が起きた時はどのように市民を非難させ,自由を制限する法整備も行われております.
それは,事故の結果と言われております.


【まとめ】
重大な「派生リスク」を抑えるための「リスク回避」も重要だが発生したリスクを最小限に抑える「リスク低減」も重要である.
そのため,「リスク発生」がないという想定は間違っている.

再びリスクマネジメントが原子力事故の説明になって
本論を語りつくせてない気がしますが
これで終わります.