2012年6月23日土曜日

食料問題を考える「食糧危機にどう備えるか/柴田明夫」(書評)


最近,よく本を読むようになったのでせっかくならという事で書評的なものを書こうかと思う


今回はこれ
食糧危機にどう備えるか-求められる日本農業の大転換  著)柴田明夫


「このまま世界人口が増えていけばかならず地球の限界に行き当たり世界的な食糧危機が発生する.それに対し日本はどう対応していくか」
という趣旨である.
まず最初に,日本の現状として

  1. カロリーベースでの自給率は40%弱であり多くを輸入に頼っている
  2. 一方,減反政策なので農業生産が抑えられている現実がある
  3. 今後,食料価格は上昇トレンドを続ける
  4. ある時を境に暴騰するだろう

穀物価格が上昇する理由として

  • 世界人口の増加
  • 新興国の肉食の増加による穀物の消費増

暴騰する時

  • 気候変動や異常気象による穀物生産の急激な減少
  • 需給バランスの崩壊

では,どうするか

  • 日本国内で自給できる体制を整える
  • 減反政策をやめ米の大増産を始める(減反してるのに食料自給率は低い矛盾から)
  • 農村コミュニティの復活を試みる
  • 大きな改革が必要であるその引き金としてTPPを用いる
TPP賛成派として懸念される事項への反論
  • 米の輸入はそれほど増えない
  • 日本の米が美味いからだ
  • 自由貿易でいざという時に穀物の輸入が容易くなる
  • 大きなショックを与え日本の農業政策の改革を促す


と・・・まとめてしまえばこんなものです
では,私が読んだ感想です.


1.カロリーベースのみでの考察
食料自給率をカロリーベースでのみ考察しています.
カロリーベースでの考察は食肉の輸入が多いほど低く出てしまいます(日本だと顕著)
つまりカロリーベースで考えて一番の解決策は食肉を増やすことだがそれでは数字が改善するだけで本質的な改善ではない(だからやっていない)
生産額においても問題が多いので,総合的な考え方つまりカロリーベースや生産額,食用穀物自給率など様々な指標で考えないといけない(ただ食料問題のエントリーとしては少し煩雑になる)

2.減反政策と穀物自給率
本著において穀物自給率が低いのになぜ減反政策をしているんだとあるが,それは米に関しての自給率は100%だからだ.
穀物自給率が低い理由は小麦にあるためそこの考察が欲しかったが全くなく残念だ.
むしろ減反政策をやめ大増産に入っても米価格の崩壊で農家はデスマーチに入ることになる.


3.TPPの影響
本著ではTPPにより農業政策の改革を行うとあるが,それはいわゆるショック療法で効果の程はあやしく根拠が乏しい.しかし現在の農政に危機感が全くないのでそれに危機感を与え改革を迫るという結論に至ってもおかしくない状態であることは認める.
TPPにより米の輸入はあまり増えないとあるが,それは現在,海外は日本向けにあまり米を作っていないから(ジャポニカ米とインディカ米の違いなど)でTPPが始まればそうではなくなる.
特にカルフォルニアで作られているジャポニカ米は日本国内で生産されたものと遜色ないものでこれが廉価で大量に入ってくることは容易に想像でき,日本人は数年もすれば産地を気にしなくなるのも想像に難くない.
なのでその論拠もかなり怪しいものである.


かなり批評になってしまったが,食料問題について考えるよいきっかけになった本だった.
批評が簡単なのも問題が複雑過ぎるからだと思われる.
なので,何を言っても穴があり重要なのは何を理念に政策を取るかである問題であることが痛感させられた.
TPP議論とかあるが国民は全方位に良い結果など存在しないことをはっきり理解して議論すべき課題であると思う.




2012年6月16日土曜日

安心とお金

久しぶりに日々の徒然を書いてみる

先日,親しくしている人の携帯の機種変更するためにd○c○m○ sh○pへ付いていきました.
まぁガジェット好きな私と行って何か契約やらなんやらで困ったことにならないように
保険的な意味合いだったと思う.

ちょっと話しは戻り,店舗へ行く前に家電量販店で携帯を買うという
選択肢を与えた所「電気屋さんは怖いから嫌だ」と言われたのだ
なぜと聞けば「直営店舗の方が安心できる」と
その時に思ったのは「安心」という言葉の意味だった

まぁ,そんなこんなで少し高めな販売をしている「直営店」で買うことにしました.
私自身はこういうガジェット物に関しては下手な店員より詳しく,飲み込みの悪い社員より詳しく契約内容も把握している自信があるので家電量販店のような
いわゆる「安心できない」店舗でも買うことはある

しかし,衣服を始めとする不得意とするところでは
自分で選ばされるような店舗で買うことができない
むしろ店員さんに選んでもらうことが多々ある(の割にセンス無いが)
大体店員さんの選ぶ服は高いのだが何がいいのかわからないので
そのまま買ってしまう

これも一種の安心をお金で買っているのかなと

世の中にはこれ以外にも似た例って沢山あると思う

総じて言えば,安心を得るためには
2つの方法しか無いということになる
「知識」か「お金」か・・・・
そして「お金」というのは最も汎用性のあるツールではないか

まぁ,当たり前の自分の中での結論は
「知識」と「お金」はあるにこしたこと無いと

そんなもの当然だww

2012年6月9日土曜日

自然エネルギー全量買い取り制度(筆者の思うとこ)

3回ほど連続で自然エネルギー全量買い取り制度をやりました.
1.概要
2.経済負担
3.目指すべき将来

じゃ,筆者の考えはどうなの?ってことです.
私の考えとして

1.自然エネルギーの普及は進めていくべき
2.目的を明確にする
3.目的にあった手法を取る
4.理性的に考える
5.国民議論はすべきではない
6.結局のとこ理想論

という事です.

【1.自然エネルギーの普及は進めていくべき】
これは,3.の目指すべき将来で述べていますが
私の観点としては,安全保障>経済の活性化>低炭素化社会
という順位付けがあります.
エネルギーの自給自足という点で自然エネルギーの開発は大きなメリットがあると考えます.
また大きな公共事業として位置づけるかどうかというのは議論の余地がありますが
むしろ自然エネルギーを推進することはメリットが大きく
自国資源を待たない日本にとってはむしろ推進しない理由が見つからないぐらいです.

【目的を明確にする】
現在の社会議論において,本来の目的であるはず(根拠法より)の
1.社会・経済の発展
2.低炭素社会の実現
という最も重視すべき点が忘れ去られ
「原子力エネルギー」の代替として「自然エネルギー」が掲げられています.
実際のところ現在の状態では,むしろ目的である2つに対して完全に逆を行なっています.
なので,「何の」ために「自然エネルギー」を推進するのか
そこをハッキリさせないと行けません.

【目的にあった手法を取る】
そもそも論ですが,もし目的が根拠法で述べられているように
1.社会経済の発展
2.低炭素社会の実現
ならば,FITという方法そしてほぼ決定された42円/kwhというのは正しのか
私は正しいとは考えておりません.
本来は産業界・経済界において自由競争・生存競争の下で自然エネルギーは普及されるべきと考えます
作られる制度では発電業者は大資本でありながら「無経営努力」「無営業努力」で大きな利潤を得られる仕組みとなり.
それは「社会経済の発展」という面では大きく損なわれていると考えます.
なぜならばキャッシュ・フローを考えればその利潤は社会活動による富の増大よりも「非発電業者」「家庭」「自治体」から合法的に「富の移転」を「容易」に実現するただのツールとなっているからです.
私としては,多くのプレイヤーが対等な立場で小さな業者であっても合理的であれば自由に参加できる制度が必要と考えます.
また低炭素社会の実現であればむしろ石炭火力やLNG発電に対して「環境税」を導入し火力発電の価格競争力を抑制すべきであり,補助金ビジネスであるFITのような制度をすべきでないと考えます.

【理性的に考える】
現在の社会の風潮として「自然エネルギー」は善,「原子力エネルギー」は悪,「火力発電は」ようわからん.
という感じです.しかしそれぞれ特性があり存在しておりそれを正確に把握する必要があります.

自然エネルギーの発電単価やエネルギー特性・エネルギー密度そして他産業との兼ね合いを実際に検討しているのか

原子力エネルギーについても,放射能とは何かどの程度危険でそのリスクは他のリスクと比較してどうなのか.
現在横たわっている問題の根本はどこにあるのか

火力発電は安全保障としてどうなのか,低炭素社会との兼ね合いは?

など考えるべき事はたくさんあり,それが一方的に悪でどれが善なのか
そんなものはないはずです
むしろそれらを全て組み合わせ日本に最適な発電形態を取っていくべきなのではないでしょうか.

【国民投票はすべきではない】
「国民投票」なんて馬鹿げています.
政治家は国民から選出された代表者であり
むしろこのような事象について「理性的」「国益」を考え議論し決定するのが政治家の役割でないでしょうか.
また国民の多くは理性的かつ合理的に問題を考えることはできない事は明白です.
そもそもリスク計算すらできない人たちの意見を聞いてなんの腹の足しになるか全くわかりません.

【結局のとこ理想論】
これまで述べて来た事は結局のとこ理想論でしかありません
企業の目的は「利潤」であり「国益」ではない.
むしろ「国益」を損なっても,「利潤」を求めてロビー活動や金をばらまくでしょう.
また,国民が愚かであるが故に国会議員も浅はかで愚者が多いのでしょう.
だから愚かな国会議員を信用出来ず「国民投票」とかを考えるのでしょう.
もう堂々巡りです.
いつもの通りの行き着く先としてやはり賢い国民にならないと全ては始まらない
となってしまします.
私ももう少し現実的な考えを出来るようにならないといけませんね.

2012年6月1日金曜日

自然エネルギー全量買取制度(目指したい将来)

ちょっと期間が空きましたが
自然エネルギー全量買い取り制度の連続シリーズ3回目
今回は前回最後に書いた
「経済的な犠牲のもとで何を得たいか」
です.
まずは,その根拠法である「気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」では
目的:エネルギーの安定供給,地球温暖化対策,産業の振興のために自然エネルギーの普及を進める


となっています.

もう少し具体化していくと
まずは温暖化対策について

【地球温暖化対策】
温暖化とは温暖化効果ガスにより,地球全体が温室ハウスのようになり
大気温度が上がってしまい生態系の破壊や疫病などの目に見えてわかる変化や
ハリケーンや干ばつなど確率論的に考えられるが,その発生確率が増大してしまうもの
など多くの影響がでると考えられます(もう既に出ています)

その原因について,本当に経済活動による二酸化炭素由来なのか
それとも太陽の活動周期などの経済活動以外の要因なのか
多くの議論があるが,それについては今回は触れないことにして

地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素の排出を減らそう!!
という目的です.
それは簡単にいえば,化石燃料を用いないという簡単な対策です.
そこで再生可能エネルギーや原子力など二酸化炭素排出量が少ない発電方法を用いればいいんじゃね?
ということですね.
そして今後地球温暖化により発生する経済的負担(農作物の不出来,治水,健康保険などなど)を少しでも減らそうという考えです.

【エネルギーの安定供給】
日本は自国でエネルギーを賄える能力はありません.
さらに,そのエネルギー源の多くは海を渡って輸入され,その多くはマラッカ海峡を通って来ます.
はっきり言ってこのマラッカ海峡を封鎖されたら間違いなく日本は死にます.
エネルギーは人間で言えば酸素に似た存在で,無くなったら直ちに死にます.
そもそもエネルギーが断たれる事なんでほとんどの人は想像すらしたことないでしょう.
それだけ,エネルギーというのは重要なものでそれを巡り多くの争いも起きています
現実的な話しをすれば先の大戦であっても石油を断たれたため日本が戦争を仕掛けたという見方が簡単にできます.(首締められたから相手を殴った,そんな感じ)

そのエネルギーの安定的確保は国の最重要命題といえるもので
今のこの不安定なものより,エネルギー密度の高い原子力やそもそも自国内で開発できる再生可能エネルギーというのはとても理にかなっていると思います.
以上のことを通し,現在のような首根っこを持った状態から解放されエネルギー産出国の顔色を伺わなくていいのは有効な軍事力を持たない日本からして大きな意味があります.

【産業の振興のため】
経済的負担と最初に書きましたが,それは日本国内だけで見ればそうかもしれません.
しかし,世界的にもこれから益々クリーンエネルギーというのは重要な存在になり
そこで日本の企業が世界のクリーンエネルギー市場でプレゼンスを示せれば海外から富を日本に持ってくる事が可能となるでしょう.
その為に,日本国内で技術を確率そして競争力を持たせるために補助金を用い日本国内で普及させる事が考えられます(公共投資の意味1).
また,この事業は一種の大型公共事業であることから失業率を低下させ消費を活発にし経済を良くするというケインズの考えにもあてはまります(公共投資の意味2)
この2については多くの議論がありますが,1については国内企業を優遇すれば簡単に考えられることでしょう.

このように,非常に日本の国益を考えた目標と将来があります.
一回目と多くが被ってしまいましたが,国益というものを本当に考えている政策であると思います
それはどの政策にも言えますが,聖人君子が運用した場合だけかもしれません.

次回を最後にしますが,そこで「筆者の考え」などを軸に
まとめていきたいと思います.